はじめに
千年に一度といわれる3月11日に発生した「東日本大震災」は東北地方沿岸部を中心に甚大な被害を及ぼしました。震災によって亡くなられた方々にご冥福をお祈りしますとともに、こうしている現在においても避難生活を余儀なくされている方々にお見舞い申し上げます。この度の震災は、地震による被害ばかりでなく、それに起因する津波がより被害を拡大させることとなりました。さらにこの津波によって東京電力福島第一原子力発電所が制御不能となり炉心融解と放射性物質の拡散という二次災害を起こしたことは、その後に電力不足による経済への影響、そして放射線による健康への安全・安心への懸念など、震災が被災地だけの問題に留まらないこととなりました。
また世界経済においては、ギリシャから始まった「ソブリン債ショック」により急激な円高が進み、企業収益の悪化につながっています。このことは震災により打撃を受けた製造業の「サプライチェーン」の回復が速やかに行われ、これからV字回復を目指していた日本経済にとってまさにダブルパンチとなっています。さらに今後中長期に円高が続けば、産業の空洞化につながり雇用の悪化が予想されるため、日々の生活にとっても大きな不安となっています。
さて本市も、震災によって多くの家屋が損壊するなどの被害を受けました。特にJR岡本駅周辺や鬼怒川左岸においての被害が大きく、中でも本市において重要な位置を占める清原工業団地内の製造業に大きな打撃となったこと。さらに昨今の円高はこれら製造業の収益悪化となり、 本市の平成24年度の歳入に大きな影響を及ぼすことと考えられます。また冬季も電気の使用が制限されれば、製造業ばかりでなく震災後の落ち込みから回復の兆しが出てきた個人消費にも影響を与えることとなり、本市をとりまく経済情勢はまさに日本経済の抱える諸問題の縮図ともいえる状況です。
ヨーロッパ経済の不安要素となっているギリシャの債務残高はその国内総生産の1.2倍といわれていますが、我が国の債務残高は2倍を超えようとしています。短期的な課題は震災復興と円高対策ですが、長期的には債務問題に取り組まなくてはなりません。本市の市債残高は類似都市と比較してもおおむね健全であるとされていますが、近年のプライマリーバランスの黒字化は財政調整基金の取り崩しによる補填によって確保されてきたものであり、「50年、100年先も持続できる」市政運営でないのが現状です。これらのことを踏まえ、平成24年度当初予算編成において以下のことを要望します。
1)予算規模について
歳入において、市税収入や国と県の交付金、補助金などの著しい増加が見込めない場合は、予算
規模を現状より拡大させないこと。
2)財源について
財政調整基金は補正予算において活用することとし、当初予算編成において財政調整基金の取り
崩しは行わないこと。
起債の額は年度内に償還する市債の額を超えないこと。
3)義務的経費について
各種業務委託費を含む総人件費を減額すること。
生活保護費の支給にあたってはケースワーカーを適正に配置し、自立支援の強化を図ること。
国民健康保険特別会計に前年度の不能欠損相当額を新たに財政安定化支援事業費として繰り入
れること。
4)投資的経費について
国や県の交付金、補助対象事業を優先し、新規の市単独事業は抑制すること。
市単独事業は起債の活用が図られるものを優先すること。
生活道路、河川、上下水道施設等の維持管理費を十分に確保すること。
各種イベント事業等について費用対効果の分析・開示を行い、事業効果の薄いイベント等について
は中止(中断)を図るなどして経費の削減に努めること。
5)政策課題について
ア)東日本大震災について
i) 震災及び原発事故に関わる各種被害の復旧、対応を継続して行い、防災体制の見直しや強化を速や
かに実行すること。
ii) 農作物と食料品の安心・安全が図れるよう必要十分な体制を整えること。
iii) 基準値を超える放射能が検知された土壌については全額補助として除染をすること。
iv) 基準値以下の微量な放射線が検出されたエリアに対象として菜の花の作付を推進し、自然除染によ
る土壌浄化を図ること。
イ)自然災害の対策について
i) 防災訓練を実施していない小規模な行政施設等の定期一斉訓練を実施すること。
ii) 「分散実施」となっている地域防災組織の定期防災訓練を市内全域で一斉に実施すること。
iii) 農山村部を対象として、情報弱者のために、同報系防災行政無線システムの導入を図ること。
iv) 一時避難所ごとに防災倉庫を設置すること。
v) 災害時要支援者支援制度の実践的な事前研修を行うこと。
vi) 退団員の復団等により消防団員の増員を図り、自然災害に対する防災体制の強化を図ること。
vii) 急傾斜地及び崖地等の自主改善に際しての資金補助制度を早急に創設すること。
ウ)新たな公共交通網の構築について
i) 基幹交通(LRTを含め)の必要性が「渋滞対策」から「中心市街地活性化」そして近年の「交通弱者対
策」へと議論が飛躍していることは、本来の必要性や費用対効果など優先すべき議論を不透明にして
いるので、もう一度原点に返った議論を行い、鬼怒川周辺地域の渋滞について速やかに解決の手段を
明示すること。
ii) 地域内交通を市内全域で実施するための予算規模を明示すること。
エ)コンパクトシティの構築について
i)「都市計画マスタープラン」は極めて抽象的であり、コンパクトシティ形成への過程が明示されていない
こと
からその実現性に不透明感を否めない。市街地拡散の抑制ばかりではない有効な具体策を提示する
こと。
ii) 高度成長期に開発された新興住宅団地における空き地、空き家の活用を図ること。
iii) 都市計画の線引き及び用途地域の見直しを行い、実効性のある計画を構築すること。
オ)市民協働のまちづくりについて
i) 自治会組織と地域まちづくり組織の二重構造を解消すること。
ii) 自治会加入を市民の義務とすること。
iii) 地域住民の同意の得られない公共施設等の建設、設置は行わないこと。また、企業等に対しても許
可、認可をしないこと。
カ)産業振興について
i) 積極的な企業誘致に努めること。
ii) 自動車、航空、情報産業の支援を充実すること。
iii) 農商工連携による6次産業化の推進を図ること。
iv) まちの駅、道の駅等の設置を実現すること。
v) 「美食良酒のまち−うつのみや」をめざし、食酒喝采都市として全国(世界)に発信すること。
vi) 平出工業団地の用途見直しを図り、流通拠点づくりへの転換をめざすこと。
キ)農業振興について
i) 小規模農家の保護制度の充実を図り、各種経営支援策を増強すること。
ii) 地産地消システムのさらなる推進を図り、農産物直売所の増設をめざすこと。
iii) 環境循環型農業を推進し、本市農産物のブランド化をめざすこと。
iv) 耕作放棄地の積極的な解消に努めること。
ク)文化振興について
i) ジャズのみにこだわらず、音楽のまち−宇都宮−として「音戯(おとぎ)の国構想」を構築し、ボーダレ
スな音楽の振興を図ること。
ii) 八幡山公園、森林公園、みずほの自然森公園のいずれかを候補地として、「妖精の森」を設置し、妖
精オブジェ群やフェアリー散策ルートの整備を開始すること。
iii) 柳田緑地公園内に自然の動植物とふれあえる「コムラサキ公園」(エリア)を命名設置すること。
ケ)中心市街地活性化について
i) 若年世帯夫婦家賃補助制度は不公平感の強い政策であるので新規募集をせず、事業の縮小を図る
こと。
ii) 空き店舗補助事業の見直しを行い、より利用しやすい制度とすること。
iii) 住民主導型の千手・宮島再開発事業を積極的に支援し、早期着手の実現に努めること。
コ)環境対策について
i) 自然エネルギー(太陽光、風力、小水力など)の推進を図ること。
ii) 菜の花プロジェクトを推進し、資源循環型社会のモデルとすること。具体的には、公用車や農耕車へ
のBDFの導入。さらにJR烏山線もBDFの活用を図り、新たな観光資源として宇都宮市のネームバリ
ューを高めること。
iii)「もったいない運動」をさらに推進すること。
iv) 有害虫鳥獣の駆除政策を強化すること。
サ)子育て支援について
i) 保育園待機児童を解消すること。
ii) 子ども医療費の現物支給を廃止、償還払い制度とし、その補助対象を中学校3年生へと拡大する
こと。
iii) 子どもの家事業における保護者負担金、施設の充実度などの学校間格差を解消すること。
シ)高齢福祉について
i) 超高齢化社会の到来に備えた「未来高齢化対策方針」を早急に整備すること。
ii) 高齢者のための就業促進策を充実させ、高齢生涯学習制度としての「長生き甲斐政策」を強化する
こと。
ス)障害福祉・生活福祉について
i) 重度心身障害者の医療費補助を現物支給とすること。
ii) 生活保護手当の支給日に行列ができる現状を踏まえ、受給者のプライバシー保護のために対策を
講じること。
セ)教育について
i)「読み、書き、そろばん」といわれる基礎的な学力向上に重点をおくこと。
ii) 教職員の多忙感の原因を調査し、有効な対策を講じること。
iii) 現場の教職員に過度な負担になる本市独自の事業は見直しをすること。
iv) 補助教員の十分な配置が行われない場合は、小中一貫教育の全市実施を見合わせること。
v) 災害時に効力を発揮する「学校メール配信システム」を全小中学校に導入し、当該費用は市が全額
負担すること。
ソ)宇都宮市医療保健事業団について
i) 経営改善を図るため、指定管理制度の導入を検討すること。
ii) 市職員の人間ドッグ受診者には優待検診項目を設けるなどして、受診者数のさらなる確保に努める
こと。
iii) 小規模事業所を対象とした検診は民間医療機関に任せるなどして事業効率の向上を図ること。
タ)その他の外郭団体の見直しについて
i) 土地開発公社の組織と役割を早急に見直すとともに、篠井ニュータウンは民間に譲渡するなどし、清算
すること。
ii)グリーントラストうつのみやの活動は緑地保全(土地取得のための募金活動など)に重点を置き、自然
に触れ合う活動などの啓蒙活動はNPOなど民間団体を支援するなどし、その事業内容全体を見直す
こと。
6.執行体制について
・機構改革として幹部職員ポストを新設するなら、兼務または他の幹部職ポストを廃止するなどして全体
の幹部職員数を増やさないこと。
・職員数全体に占める幹部職員の割合を減らすよう努めること。
・技術職の中途採用などを積極的に行うこと。
・業務委託を含めた人件費の適正規模を早期に明示すること。
・現業職員の有効活用を図ること。
・地域分散型福祉事務所の設置をめざすこと。
・河川や道路の管理にあたる職員に対して、災害時に着用するための防災服を早急に支給すること。
・分限条例における失職規定の特例化を図り、不適正な職員処分のあり方を見直すこと。
・議会に専決処分の報告をする際に職員の実名公表をしないこと。
・コンサル依存を改め、職員の政策立案能力を高めること。
・女性幹部の登用を積極的に行うこと。
・職員に対する対行政暴力の防止策やモンスタークレーマー対策を十分に行うこと。